【社労士解説】社会保険の適用拡大とは?2027年から始まる段階的拡大と雇用保険の週10時間ルールをわかりやすく解説

社会保険(健康保険・厚生年金保険)・雇用保険の加入対象が、これから段階的に広がっていきます。
本記事では、制度が変わることで経営者としてはどんな準備が必要になるのか、実務の視点から整理しました。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)
企業規模要件(厚生年金保険加入者数)が段階的に緩和され、2035年に撤廃されます。
現在
51人以上
2027年10月〜
36人以上
2029年10月〜
21人以上
2032年10月〜
11人以上
2035年10月〜
全事業所(規模要件撤廃)
雇用保険
加入の労働時間基準が引き下げられます。
現在
週20時間以上
2028年10月〜
週10時間以上

今後10年ほどかけて、社会保険・雇用保険それぞれの加入対象が段階的に広がっていきます


📌 この記事でわかること

社会保険・雇用保険の加入対象は、今後数年から10年ほどかけて段階的に広がっていきます。企業規模を問わず、いずれは短時間で働く従業員を加入させる場面が出てきます。この記事では、経営者として気になる保険料負担の増加はもちろん、資格取得の手続きなど事務面でどんな対応が必要になるのかを、あわせて整理します。

社会保険・雇用保険の加入要件

ここまで、加入対象の範囲が段階的に広がっていくことをお伝えしました。
ではそもそも、何を満たせば社会保険・雇用保険の加入対象になるのでしょうか。実は「原則」「適用除外」「適用除外でも対象になるケース」という3つの考え方を押さえるだけで、今回の改正でなぜ加入者が増えるのかがシンプルに理解できます。

社会保険(厚生年金・健康保険)

原則 適用事業所で働く人は、被保険者となる 加入対象

適用事業所に使用される方は、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります(健康保険法3条1項、厚生年金保険法9条)。正社員はもちろん、パート・アルバイトの方であっても、本来はこの原則があてはまります。(厚生年金保険には、70歳未満であることという年齢の要件もあります。)

適用除外 労働時間が短い人等は対象外となる 対象外

この原則には「適用除外」があります。1週間の所定労働時間が、その会社の通常の労働者の4分の3未満である方などは、被保険者とならない扱いとされてきました。
(※この4分の3未満で働く方のうち、主に週の所定労働時間が20〜30時間である人を「短時間労働者」と呼びます。)

適用除外でも対象となるケース 一定の要件を満たせば、それでも対象となる 加入対象

ただし、短時間労働者であっても、企業規模要件(厚生年金保険の加入者数が一定数以上であること)と、次の4要件をすべて満たす場合は、被保険者となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 2か月を超えて働く見込みがある
  • 学生ではない
  • 月額報酬が8.8万円以上
具体例(通常の労働者が週40時間勤務の会社の場合)
  • 週30時間以上勤務 → 原則どおり加入対象
  • 週20時間以上30時間未満勤務(短時間労働者) → 適用除外にあたるが、要件を満たせば加入対象

今回の改正では、「企業規模要件」が2027年から2035年にかけて段階的に緩和され、最終的には撤廃されます。要件にあてはまる企業の範囲が広がることで、これまで適用除外のままだった短時間労働者も、新たに加入対象となっていきます。

雇用保険

原則 適用事業所に雇用される労働者は、被保険者となる 加入対象

雇用保険も同様です。適用事業所に雇用される労働者は、原則として被保険者となります。

適用除外 労働時間が短い人等は対象外となる 対象外

以下にあてはまる場合等は適用除外として被保険者となりません。

  • 1週間の所定労働時間が20時間未満
  • 学生である
  • 継続して31日以上の雇用が見込まれない

2028年10月からは、この適用除外のうち「週の所定労働時間」の基準が「20時間未満」から「10時間未満」に変わることで、雇用保険の対象者が増えます。

適用拡大のスケジュール

前のセクションでお伝えしたとおり、社会保険も加入には「企業規模要件」、雇用保険の加入には「週の所定労働時間」という基準があります。
今回の改正では、この基準そのものが段階的に変わっていきます。ここでは、いつ・どう変わっていくのかを具体的に見ていきます。

社会保険:企業規模要件は2027年から2035年にかけて段階的に緩和

企業規模要件は、2027年10月から2035年10月にかけて5段階で緩和され、最終的には撤廃されます。

施行時期対象となる企業規模(厚生年金の被保険者数)
現在(2024年10月〜)51人以上
2027年(令和9年)10月〜36人以上
2029年(令和11年)10月〜21人以上
2032年(令和14年)10月〜11人以上
2035年(令和17年)10月〜企業規模要件を完全撤廃

企業規模要件は、上記の表のとおり段階的に撤廃へ向かっています。また、実は賃金要件(月8.8万以上)についても、最低賃金の上昇により撤廃へ向かうことが決まっています。企業規模・賃金、両方の要件が撤廃に向かうため、今後、社会保険対象者の裾野は大きく広がっていきます。

雇用保険:2028年10月から、週10時間以上が対象に

雇用保険は、社会保険とは異なるタイミング・異なる基準で変わります。2024年5月に成立した改正雇用保険法により、2028年10月1日から、加入基準となる週の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に引き下げられます。

施行時期対象となる週の所定労働時間
現在20時間以上
2028年10月〜10時間以上

社会保険が2027年から2035年にかけて段階的に(5段階で)変わっていくのに対し、雇用保険は2028年10月の一度の変更で基準が切り替わります。国の試算では、この改正によって新たに雇用保険の対象となる方は最大で約500万人にのぼるとされており、対象者数という点では雇用保険の変更も決して小さな影響ではありません。

実務への影響

ここまで、社会保険・雇用保険の加入対象がどう変わっていくかを見てきました。
ここからは、実際に対象者が増えることで、経営者としてどのような影響があるのかを見ていきます。

保険料負担はどれくらい増えるか

新たに社会保険に加入する従業員1人あたり、会社が負担する保険料は月額・年額でどの程度になるのか、給与水準別の目安は次のとおりです。

月額給与会社負担(月額目安)会社負担(年額目安)
90,000円約12,600円約15.1万円
130,000円約19,000円約22.8万円
160,000円約22,900円約27.5万円

※令和8年度・協会けんぽ東京都の保険料額表(健康保険・子ども子育て支援金・厚生年金保険、介護保険第2号被保険者に該当しない場合)にもとづく、従業員1人あたりの会社負担の概算です。実際の金額は標準報酬月額の等級や都道府県により異なります。このほか雇用保険料(会社負担分)が別途発生します。

事務手続きも増えます

社会保険・雇用保険の対象者の増加に伴い、それぞれの手続きが必要になります。特に以下の3点は、実際にお問い合わせをいただくことが多い手続きです。

1
社会保険雇用保険育児関連手続き

育児休業給付金や産前産後休業に関する手続きは、もともと書類の種類が多く手間のかかる分野です。加えて、近年は法改正により手続きの複雑性が増しています。対象となる従業員が増えることで、負担が比例して増えていきます。

2
雇用保険離職票の作成・届け出

週10時間以上の短時間労働者が新たに雇用保険の対象になると、離職時の離職証明書・離職票の作成対象も増えます。賃金額や勤務実態を正確に反映する必要があり、慣れないと判断に迷う場面が多い手続きです。

3
社会保険随時改定手続き

短時間労働者が新たに社会保険の対象になると、契約変更や昇給等にともなう「随時改定(社会保険料を見直す手続き)」が必要かどうかの判断も増えます。固定的賃金の変動や2等級以上の差など、専門的な確認が必要になります。

社会保険・雇用保険への加入対象が広がることで、保険料負担と事務手続きの両面で、これまで以上の対応が求められます。制度改正は段階的に進むとはいえ、対象者は着実に増えていきます。
早めに影響を把握し、準備を進めておくことが重要です。

後手に回らないために、社労士に任せる選択があります

制度改正は数年がかりで進みますが、対応が後手に回るほど、負担も現場の混乱も大きくなりやすいです。特に保険料負担や事務手続きが同時に増えていく中、すべてを自社だけで正確に対応し続けるのは、決して簡単なことではありません。
今のうちに、判断しておきたい3つのポイントを整理しました。

1
自社でいつから対象となるかを確認する

社会保険は自社の厚生年金保険の被保険者数、雇用保険は週10時間以上働くパートの人数を目安に、いつ頃から対象になりそうかを確認しておきましょう。特に負担が大きいのは社会保険の保険料です。概算額を把握し、今後の見通しをつけておくと安心です。

2
手続きの漏れ・遅延リスクを把握する

社会保険・雇用保険まわりの手続きは、細かなものまで含めると30〜40種類にのぼります。従業員が一人増えるだけで、潜在的に発生しうる手続きの数はこれほど多いものなのです。
手続きの漏れ・遅延があると、遡っての保険料徴収や従業員との労務トラブルに発展する可能性もあります。

3
自社対応の限界を見極め、専門家への委託を検討する

制度改正のたびに、こうした確認・判断・手続きが積み重なっていきます。社内でどこまで対応できるか、その限界を早めに見極めておくことが重要です。負担が大きいと感じる場合は、早い段階で専門家への委託を検討することで、対象者が増えてから慌てることなく、安定した対応体制を維持できます。

これらを早めに把握しておくことで、これからの適用拡大時代に余裕を持って対応できます。手続きについては、社労士に任せる選択肢をぜひご検討ください。

手続き業務は、当事務所にお任せください

社会保険・雇用保険の対象者は、これから徐々に広がっていきます。

制度が変わるたびに、対応すべきことも増えていきます。判断に迷うことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。日々の手続きから今回のような制度改正への対応まで、当事務所がまとめてサポートいたします。

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